木刀による剣道基本技稽古法の覚え方で悩む人の多くは、9本の名称を丸暗記しようとして途中で順番が混ざり、審査や稽古の場で次に何をするのか不安になりがちです。
しかし、木刀による剣道基本技稽古法は単なる技名の並びではなく、一本打ちから連続技、払い技、引き技、抜き技、すり上げ技、出ばな技、返し技、打ち落とし技へと段階的に広がる構成になっています。
全日本剣道連盟はこの稽古法について、木刀を使って剣道の基本技を習得し、日本剣道形への移行を容易にする目的があると説明しており、9本を意味のある流れとして覚えることが大切です。
この記事では、語呂合わせで順番を思い出す方法に加えて、各基本の役割、動作を忘れにくくする分け方、審査前に崩れやすい注意点まで整理します。
木刀による剣道基本技稽古法の覚え方は順番の意味でつかむ

最初に押さえたい結論は、語呂合わせだけで終わらせず、9本の技を「攻め方が少しずつ増えていく順番」として理解することです。
覚え方の入口としては「一、二と払って引き抜きすれば、出ばな返して打ち落とすなり」という語呂が便利ですが、審査や稽古で使える記憶にするには、それぞれの言葉がどの技に対応するのかを体で確認する必要があります。
基本1と基本2は自分から打つ基礎、基本3と基本4は相手との接点を作る技、基本5以降は相手の動きに応じる技として見ると、名前の暗記が動作の記憶に変わります。
語呂で骨組みを作る
木刀による剣道基本技稽古法を最初に覚えるなら、まず9本を一続きの言葉にして頭の中に骨組みを作るのが効果的です。
「一、二と払って引き抜きすれば、出ばな返して打ち落とすなり」と唱えると、基本1の一本打ち、基本2の二段打ち、基本3の払い技、基本4の引き技、基本5の抜き技、基本6のすり上げ技、基本7の出ばな技、基本8の返し技、基本9の打ち落とし技を順に思い出せます。
- 一は基本1
- 二は基本2
- 払っては基本3
- 引きは基本4
- 抜きは基本5
- すればは基本6
- 出ばなは基本7
- 返しては基本8
- 打ち落とすは基本9
ただし、語呂はあくまで順番を呼び出すための取っ手なので、語呂を言えたら終わりにせず、声に出した直後に木刀なしで足の出し方と打つ部位を確認する練習までつなげることが大切です。
基本1は打突部位の基準で覚える
基本1は一本打ちの技で、正面、小手、胴、突きという打突部位を順に確認する稽古です。
覚え方としては、いきなり細かい所作を丸ごと暗記するよりも、まず「上、手元、体、中心」という位置の移動でとらえると混乱しにくくなります。
正面は相手の中心をまっすぐ割る感覚を作り、小手は手元を正確に打つ感覚を作り、胴は刃筋と体さばきを意識する入口になり、突きは剣先の方向と間合いの緊張感を学ぶ場面になります。
審査前に忘れやすいのは、基本1の中だけで4種類あるために、胴の後で終わったつもりになって突きを抜かしてしまうことです。
自宅で確認するときは「面、小手、胴、突き」を声に出しながら、実際に打たなくても目線と剣先の向きを順番に動かすだけで、基本1が9本全体の土台として定着しやすくなります。
基本2は小手面の流れで覚える
基本2は連続技であり、小手から面へつなぐ二段打ちとして覚えるのが基本です。
名称だけを見ると「二・三段の技」という言葉が難しく感じられますが、実際の記憶では「小手を打ったら止まらず面へ進む」と考えると動作の流れがつかみやすくなります。
基本1では打突を一つずつ区切って確認しましたが、基本2では一つ目の打突で終わらず、相手の反応や姿勢が崩れる前に次の打突へ進む感覚を学びます。
初心者が間違えやすい点は、小手を強く打とうとして足が止まり、面へのつながりが遅れてしまうことです。
覚えるときは「小手で始まり面で決める」と短く言い換え、手だけで二回振るのではなく、足が小手から面へ自然に前へ運ばれているかを先生や相手に見てもらうと安定します。
基本3は払って面で覚える
基本3は払い技で、相手の木刀を払ってから面を打つ流れとして覚えます。
この基本で大事なのは、払いそのものを目的にするのではなく、相手の中心を外して面を打つための準備として払いを使うことです。
暗記するときは「払い」と「面」を別々の二つの動作として覚えるよりも、「払った方向に空いた中心へ面を入れる」と一つの流れで理解すると忘れにくくなります。
よくある失敗は、相手の木刀を大きくはじこうとして自分の剣先が中心から外れすぎ、次の面が遅くなることです。
稽古では、払いの強さよりも払いの直後に面の軌道へ戻れるかを意識し、最初はゆっくりでも刃筋と足の前進がそろうように繰り返すと、基本3の意味が自然に入ってきます。
基本4は引き胴の場面で覚える
基本4は引き技で、面から鍔ぜり合いの場面を経て引き胴につなげる流れとして覚えます。
ここで混乱しやすいのは、最初の面を打ったあとにすぐ胴へ移るのではなく、相手と接近した状態から後ろへさばきながら胴を打つ点です。
基本1から基本3までは前へ出る感覚が中心ですが、基本4では近い間合いから下がって打つ感覚が加わるため、順番の中でも動作の雰囲気が大きく変わります。
覚え方としては「前で面、近づいて、下がって胴」と三つの場面に分けて言えるようにすると、審査で頭が白くなっても流れを戻しやすくなります。
引き技は勢いだけで後ろへ逃げると姿勢が崩れやすいため、足幅を乱さず相手に正対したまま残心へ移る意識を持つことが大切です。
基本5は面を抜く反応で覚える
基本5は抜き技で、相手の面を抜いて胴を打つ技として整理すると覚えやすくなります。
基本4の引き胴と同じく胴を打つ技なので混ざりやすいのですが、基本4は接近した状態から下がって打ち、基本5は相手の面に対して体をさばいて抜いて打つ点が異なります。
つまり、基本5は自分から面を打って近づく技ではなく、相手が面へ来た瞬間に自分の体を安全な位置へ外しながら胴へ入る技です。
暗記では「面が来たら、抜いて胴」と短く置き換えると、技名の中の「抜き」が動作と結びつきます。
注意点は、避けることだけに意識が向くと胴打ちの刃筋や残心が弱くなり、単なる逃げの動作に見えてしまうことです。
基本6は小手をすり上げる技で覚える
基本6はすり上げ技で、小手に来た相手の木刀をすり上げて面を打つ技として覚えます。
語呂では「すれば」が基本6に対応しますが、実際には「すり上げれば面」という形で声に出すと、言葉と動作がつながりやすくなります。
抜き技が相手の打突を体さばきで外す感覚だとすれば、すり上げ技は相手の木刀を自分の木刀で受け流し、すぐに反撃へ移る感覚です。
初心者が迷いやすいのは、木刀をただ受け止めるのか、はじくのか、すり上げるのかの違いです。
強く受け止めると動きが止まりやすく、乱暴にはじくと中心が外れやすいため、相手の小手打ちを自分の鎬で滑らせるように処理して面へ移る意識を持つと安定します。
基本7は起こりを捉える技で覚える
基本7は出ばな技で、相手が動き出そうとする起こりを捉えて小手を打つ技として覚えます。
基本5や基本6は相手の打突に応じる印象が強いのに対して、基本7は相手が打ち切る前の瞬間をとらえるため、タイミングの理解が重要になります。
暗記するときは「出ばな小手」という名称をそのまま覚えるだけでなく、「出る前の小手」と言い換えると狙う瞬間がはっきりします。
よくある失敗は、相手が完全に面を打ち始めてから反応してしまい、出ばなではなく遅れた小手になってしまうことです。
稽古では速さを競うよりも、相手の剣先が上がる気配、肩や手元の動き、足が出る気配を観察し、自分の右足が早すぎず遅すぎず出る感覚をつかむと覚え方が深まります。
基本8と基本9は応じ方の違いで覚える
基本8は返し技の面返し胴で、基本9は打ち落とし技の胴打ち落とし面です。
どちらも相手の打突に対応する技なので混ざりやすいのですが、基本8は面に対して返して胴を打ち、基本9は胴に対して打ち落として面を打つと整理すると違いが明確になります。
| 基本 | 相手の動き | 自分の応じ方 | 打つ部位 |
|---|---|---|---|
| 基本8 | 面 | 返す | 胴 |
| 基本9 | 胴 | 打ち落とす | 面 |
覚えるときは「面が来たら返して胴」「胴が来たら落として面」と対になる言葉で唱えると、最後の二本を連続して思い出しやすくなります。
注意点は、基本8と基本9を派手な応じ技として大きく見せようとしすぎると、体の軸や残心が崩れて基本技らしい正確さが失われることです。
9本の順番を審査前に整理する

順番を覚える段階を越えたら、次は審査や道場の稽古で呼ばれたときに、すぐ動作へ移れる形で整理する必要があります。
特に級位審査では、受ける級や地域の運用によって確認される範囲が異なる場合があるため、普段の先生の指示と最新の審査要項を合わせて確認しておくことが大切です。
ここでは9本を表で見直し、元立ちと掛り手の役割、級ごとの範囲を確認しながら、単なる暗記から実践用の記憶へ変える考え方をまとめます。
9本の対応表で確認する
木刀による剣道基本技稽古法は、基本番号、技の種類、実際に行う打突をセットで覚えると取り違えが減ります。
番号だけを覚えると「基本6は何だったか」と止まりやすく、技名だけを覚えると「どの場面で何を打つのか」が曖昧になりやすいからです。
| 番号 | 技の種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 基本1 | 一本打ち | 面・小手・胴・突き |
| 基本2 | 連続技 | 小手から面 |
| 基本3 | 払い技 | 払い面 |
| 基本4 | 引き技 | 引き胴 |
| 基本5 | 抜き技 | 面抜き胴 |
| 基本6 | すり上げ技 | 小手すり上げ面 |
| 基本7 | 出ばな技 | 出ばな小手 |
| 基本8 | 返し技 | 面返し胴 |
| 基本9 | 打ち落とし技 | 胴打ち落とし面 |
この表を見ながら稽古する場合は、縦に読むだけでなく、基本1から基本4までを自分から攻める系統、基本5から基本9までを相手の動きに応じる系統として色分けして覚えると記憶に残りやすくなります。
紙に書くときは長い文章を書き写すより、番号の横に「面小胴突」「小手面」「払い面」のような短い合図を書き、動作の直前に見返せる形にするのがおすすめです。
元立ちと掛り手を分ける
木刀による剣道基本技稽古法では、掛り手だけでなく元立ちの動きも覚えなければ、相手と組んだときに流れが止まりやすくなります。
掛り手は技を行う側として注目されがちですが、元立ちは間合い、合図、打たせ方、応じさせる動きを正しく示す役割を持ちます。
- 掛り手は技を実施する
- 元立ちは機会を作る
- 双方が間合いを守る
- 残心まで崩さない
覚えるときは一人で掛り手の順番だけを唱えるのではなく、相手役になったときに何を打たせるのか、どのタイミングで前へ出るのかを言葉にして確認すると理解が深まります。
審査や合同稽古では、相手が自分と同じ速さで動くとは限らないため、元立ちと掛り手の両方を知っておくことが安心につながります。
級ごとの範囲を確認する
全日本剣道連盟の称号・段級位審査規則の細則では、級位審査の実技として一級は基本1から9まで、二級は基本1から6まで、三級は基本1から4までと示されています。
ただし、実際の審査運用や指示の出し方は地方代表団体や会場によって異なることがあるため、受審前には所属団体や先生から配布される要項を必ず確認する必要があります。
| 級位 | 主な範囲 | 確認の重点 |
|---|---|---|
| 三級 | 基本1から4 | 基本動作 |
| 二級 | 基本1から6 | 応じる感覚 |
| 一級 | 基本1から9 | 全体の流れ |
範囲が短い級を受ける場合でも、先の基本を少し知っておくと、現在覚えている技が全体の中でどこにあるのかが見えやすくなります。
反対に一級を受ける場合は、9本を最初から最後まで通す練習だけでなく、途中の基本番号を突然言われても始められるように分割練習をしておくと安心です。
動作を忘れない練習方法

覚えたつもりでも本番で出てこない原因は、頭の中の言葉と実際の動作が結びついていないことです。
木刀による剣道基本技稽古法は、技名、足さばき、打突部位、残心、相手との間合いが同時に関わるため、机上の暗記だけではどうしても抜けが出ます。
ここでは、自宅でもできる確認、道場での組み稽古、動画やメモの使い方を分けて、9本を忘れにくい記憶にする練習方法を紹介します。
声に出して体を動かす
もっとも手軽な練習は、技名を声に出しながら足だけ、または手だけで順番をなぞる方法です。
声に出すことで頭の中の順番が整理され、足や手を少しでも動かすことで言葉が体の感覚と結びつきます。
- 技名を唱える
- 足だけ確認する
- 手だけ確認する
- 最後に全身で行う
家の中で木刀を振れない場合は、木刀を持たずに右足を出す、左足を引きつける、体をさばく位置を確認するだけでも十分に効果があります。
大切なのは、速く通すことではなく、基本番号を言った瞬間に次の動きが自然に浮かぶ状態を作ることです。
3つのまとまりに分ける
9本を一気に覚えようとすると長く感じるため、3つのまとまりに分けると負担が減ります。
基本1から3は前へ攻める基礎、基本4から6は間合いや相手の打突に対応する技、基本7から9はタイミングと応じ方の違いを見せる技として整理できます。
| まとまり | 範囲 | 覚える軸 |
|---|---|---|
| 前半 | 基本1から3 | 打つ基礎 |
| 中盤 | 基本4から6 | さばく反応 |
| 後半 | 基本7から9 | 機会の理解 |
この分け方を使うと、たとえば基本5を忘れたときに「中盤の抜き技だった」と思い出す手がかりが増えます。
稽古計画を作るときも、今日は基本1から3を正確に、次回は基本4から6を丁寧に、最後に基本7から9を合わせるという形にすれば、短時間でも集中しやすくなります。
動画とメモを併用する
木刀による剣道基本技稽古法は、文章だけで覚えるよりも、正しい演武や先生の見本を見てからメモに落とし込むと理解しやすくなります。
動画を見るときは、迫力や速さだけを見るのではなく、開始の礼法、間合いに入る歩数、打突後の残心、元に復する動きまで確認することが大切です。
- 最初は全体を見る
- 次に足を見る
- 次に剣先を見る
- 最後に残心を見る
メモは長文にするよりも、自分が忘れやすい点だけを短く書くほうが実用的です。
たとえば「基本4は近づいてから引く」「基本8は面を返して胴」「基本9は胴を落として面」のように、自分専用の合図を作ると本番前に見返しやすくなります。
審査で崩れやすい注意点

順番を覚えていても、審査では緊張によって礼法、間合い、足さばき、残心が普段より乱れやすくなります。
木刀による剣道基本技稽古法は、技そのものの正確さだけでなく、相手とそろえること、木刀を日本刀として扱う意識、始まりから終わりまでの落ち着きが見られます。
ここでは、覚えた順番を本番で崩さないために、特に注意したいポイントを整理します。
礼法を急がない
審査前に技の順番ばかり気にしていると、最初と最後の礼法が雑になりやすくなります。
木刀による稽古法では、木刀の持ち方、帯刀、抜き合わせ、蹲踞、中段の構えといった所作も全体の印象に関わります。
- 木刀を丁寧に扱う
- 礼の角度を乱さない
- 蹲踞で慌てない
- 納める動作を省かない
礼法が乱れると、技に入る前から焦りが生まれ、せっかく覚えた順番も抜けやすくなります。
稽古では9本の技だけを通す日と、礼法から最後の納刀まで通す日を分けて練習し、本番と同じ流れで体を慣らしておくことが大切です。
間合いを毎回そろえる
木刀による剣道基本技稽古法で順番が合っていても、間合いが遠すぎたり近すぎたりすると技の意味が伝わりにくくなります。
特に相手と向かい合う稽古では、自分だけが覚えていても成立せず、双方が正しい距離で動く必要があります。
| 乱れやすい場面 | 起きる問題 | 意識する点 |
|---|---|---|
| 開始直後 | 距離がずれる | 歩数をそろえる |
| 連続技 | 足が止まる | 前進を保つ |
| 応じ技 | 体が逃げる | 正対を保つ |
審査前は、技名を覚える練習だけでなく、相手と一足一刀の間合いに入ったときの距離感を何度も確認しましょう。
間合いが安定すると、相手の動きに合わせる余裕が生まれ、基本5以降の応じ技でも慌てて大きく動きすぎる失敗を減らせます。
残心まで一つの技として覚える
初心者が見落としやすいのは、打った瞬間で技が終わったと思ってしまうことです。
木刀による剣道基本技稽古法では、打突後の姿勢、剣先の向き、相手への意識、元に復する動作まで含めて一つの流れになります。
- 打った後に止まらない
- 相手から目を切らない
- 姿勢を崩さない
- 元に復するまで意識する
残心が弱いと、技そのものは合っていても途中で集中が切れたように見えやすくなります。
覚え方としては、技名の後ろに必ず「残心」を付けて唱え、たとえば「面返し胴、残心」「胴打ち落とし面、残心」と声に出して練習すると最後まで意識が残ります。
9本を迷わず使える記憶に変える
木刀による剣道基本技稽古法の覚え方は、語呂合わせで順番をつかみ、番号、技名、打突部位、相手の動きをセットにして整理することが中心になります。
まずは「一、二と払って引き抜きすれば、出ばな返して打ち落とすなり」で9本の骨組みを作り、基本1は打突部位、基本2は小手面、基本3は払い面、基本4は引き胴、基本5は面抜き胴、基本6は小手すり上げ面、基本7は出ばな小手、基本8は面返し胴、基本9は胴打ち落とし面として結びつけましょう。
次に、基本1から3を前へ攻める基礎、基本4から6を間合いや相手の打突に対応する中盤、基本7から9を機会と応じ方を示す後半として分けると、途中で忘れても戻れる手がかりが増えます。
審査を意識するなら、順番の暗記だけでなく、礼法、間合い、元立ちと掛り手の役割、残心まで含めて練習することが欠かせません。
焦って速く通すよりも、一つひとつの技を短い言葉で説明できる状態にしてから体を動かすと、9本はただの丸暗記ではなく、剣道の基本を理解するための確かな記憶になります。



